体内時計、なぜ正確に時を刻む?

2010年05月16日 日本経済新聞より 人間は朝に目覚め夜に眠くなる生体リズムを備える。地球の昼夜の周期に合わせるため、多くの生物が獲得した機能だ。その役割を担う遺伝子(時計遺伝子)の研究が急速に進んでいるが、1日24時間の時を正確に刻む仕組みは、まだ分かっていない。 時計遺伝子は長くショウジョウバエを中心に研究されてきたが、1997年に状況が一変した。マウスで発見され、対象がほ乳類へと広がった。これまでに約20個が見つかっている。それぞれが巧妙に連動してたんぱく質を合成したり分解したりしながらリズムを生み出し、体内時計として働いているようだ。 周期は24時間より少し長い。朝の光でリセットできる便利な機能があり、地球の自転とのズレを補正する。補正は、時計の針を進ませるより遅らせる方が簡単というのも不思議な点だ。 時計遺伝子で研究者を悩ませる難問がある。なぜ正確に時を刻めるかだ。その仕組みはたんぱく質の合成・分解に依存する。理化学研究所の上田泰己プロジェクトリーダーは「体温が変化しても安定な性質が一番不思議だ」と解説する。 通常の生体内におけるたんぱく質の反応は温度によって速度が大きく変わり、試験管での実験では温度を10度高くすると速度は2倍以上速くなるといわれる。ところが体内時計のリズムは、温度がセ氏27~37度の範囲で変化しても最大で20%しか変動しない。 解明に向け2つの仮説が考えられてきた。一つは、いくつかの段階に分かれた反応が温度によって速くなったり遅くなったりして、全体で速度を調節している「バランスモデル」。もう一つが、温度に依存しない反応が別にあるという説だ。 最近、名古屋大学や理研のグループが相次いで、温度に依存しない反応説を支持する成果を発表した。いずれも「リン酸化」という、たんぱく質に化合物を結合する反応が周期を刻む基本になっていることを示した。有力だったバランスモデルが揺らぎ始めている。 時計遺伝子は様々な体調と深くかかわり、不眠などの原因にもなる。研究が治療や予防につながる期待も膨らんでいる。

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