日銀の新貸出制度議論スタート 「成長分野」幅広く 農業も対象?

2010年05月16日 日本経済新聞より 日銀が成長促進のための新貸出制度の議論を本格的に始める。環境やエネルギー、医療などの成長分野に融資する金融機関に低利で資金を供給する案が有力。貸付金利は年0.1%,期間は6ヵ月~1年を軸に検討する。幅広い分野に資金を行き渡らせ、日本の潜在成長率を引き上げるのが狙い。20日から始まる金融政策決定会合でも議論し、今夏にも新制度を始めることを目指す。 ●実績に応じて融資 日銀は民間金融機関などとの意見交換を始め、具体的な仕組み作りに着手した。日銀は1998年にも貸し渋り対策として臨時貸出制度を導入し、融資の増加額に応じて金融機関に資金を貸し付けた。今回の制度が異なるのは、日銀が「成長分野」を定め、その分野に限った実績に応じて資金を貸し出す点だ。 日銀は政府が昨年12月に公表した成長戦略などを念頭に「環境・エネルギー」「科学・技術」などの領域を成長分野として想定している。ただ日銀が特定の産業に肩入れすれば、資源配分をゆがめているとの批判は避けられない。このため、研究開発や設備投資を目的とした融資を幅広く「成長分野向け」とする方向で調整している。地方の観光振興や農業向けの融資なども対象に含まれる可能性がある。 ●金融機関の意欲誘う 融資を直接担うのは民間金融機関。金融機関を積極的に動かすためにも、日銀が貸し出しで好条件を示すことが欠かせない。 日銀は年0.1%の低利で期間3ヵ月の資金を貸し付ける「新型オペ(公開市場操作)」を昨年12月に導入した。新貸出制度は貸出期間を6ヵ月~1年程度という異例の長さにし、金融機関の意欲を引き出すことを担う。貸し出しは国債などが担保だが、担保の範囲を広げて使い勝手をよくすることも検討する。 ●証券化商品の支援も 日銀は今回の貸出制度以外にも、成長促進に向けた新たな施策を検討する。銀行が持つ成長分野向けの貸出債権を裏付けに、新たな証券化商品を作る試みなどを支援する案が浮上している。日銀が、商品のうち信用力の高い部分を資金供給の担保にしたり、買い取ったりする手法が有力。 そうした商品が増えれば、銀行の新規融資が促され、企業が資金を調達しやすくなる。運用難の投資家にとっても、リスクマネーの有望な投資先が生まれる。証券化商品は投資化には裏付けとなる資産の健全度がみえにくく、米住宅バブルを背景とする金融危機の元凶ともいわれた。日銀は銀行の審査がしっかりしていればリスクの管理は可能だとみている。 呼び水効果に疑問の声 「民間銀行の融資の内部手続きが進みやすくなればいい」「融資先開拓のセールストークに使ってもらってもかまわない」。日銀内では、こんな声が聞かれる。 新たな貸出制度は既存の金融調節の枠組みを使いながら、間接的に民間銀行の融資意欲を刺激しようという内容。だが銀行はカネ余りにあえいでおり、低利の資金をいくらでも調達できる。新制度で日銀から有利に調達できても、成長分野への融資が一気に膨らむとは考えにくい。 銀行の融資を一定の方向に促そうというのは中央銀行として異例ではあるが、民間の資源配分に直接干渉する政策金融との距離は大きい。ある幹部は「我々がなりたいのは、旗振り役」と語る。日本が長期のデフレにあえぐ主因について、人々の成長期待の低下にあるとみているためだ。 だが参院選を控え与野党では金融政策への期待が高まる。「デフレは日銀の努力不足の結果」との不満は根強い。新制度に対し、国債買い増しなど大胆な金融緩和を避けるための「目くらまし」との批判も想定される。

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