ネットと店舗 顧客が壁崩す

2010年04月13日 日経新聞より インターネットが日常生活に浸透し、消費者と企業の関係を変える原動力となっている。ネットと実際の店舗を分け隔てなく利用する消費者が急増。こうした買い手を取り込むため、ネット企業と小売企業が連携する動きも出始めた。新たな消費の現場を追った。 「最安値チェック」 「家電製品を最安値で買うため、ネット通販と量販店のタイムセールを必ずチェックしている」。都内の会社員、矢崎誠さん(41)はこう語る。だが量販店を歩き回るわけではない。日本最大の価格比較サイト「価格・com」の中でも、量販店の特売情報について消費者の書き込みが多い掲示板に目を凝らす。 最近買ったのは録画機能付き42型の薄型テレビ。東京・渋谷の大手量販店のタイムセールで、大手メーカー品をポイント還元込みで10万円強で購入できた。 掲示板には「消費者がどの店でいくらで買ったかなど踏み込んだ情報がふんだんにある」と矢崎さん。価格・coの場合、掲示板閲読者は今年に入って月1000万人を超え、サイト全体の約4割を占める存在になった。 「午後6時からネット上でパソコン関連機器のセールを始めます」。ヤマダ電機は1月からツイッターを使って特売情報などの提供を始めた。多様な手段で価格情報を収集する消費者を取り込むのが目的で、登録閲読者はすでに1万人を上回った。 ネット通販と店舗のどちらを利用するのか。これまで競合関係にあるとみられていた両者だが、消費者はそんな垣根を簡単に崩して、価格を追求する。都内の主婦(39)は3月に家族3人で3泊4日の沖縄旅行に出かけた。ツアー料金は約10万円。「サイトと旅行会社の店頭で比較し、安い商品のあった旅行会社で選んだ」という。 「新事業に期待も」 消費者の変化に対応するため、企業も従来の発想を超えて手を組み始めた。 「ネット通販はまとめ買いしなければ送料がかかる。ここでは少量で試し買いできるのでうれしい」。西武池袋本店(東京・豊島)地下1階の店舗でバームクーヘンを購入した60代の女性は満足そうに言う。 この店はネット通販大手のヤフーと小売り最大手のセブン&アイ・ホールディングスが3月下旬に出店したアンテナショップ。通販サイト「ヤフー!ショッピング」の商品から選んだスイーツなど十数品目を集めて販売している。 通販サイトでも店舗でも人気を集める商品を探り出し、セブン&アイの国内約1万4千店で販売できる新商品を開発。互いに客層を広げる考えだ。セブン&アイは「融合が進めば新たな事業が開ける」(鈴木敏文会長)とも期待する。 野村総合研究所によると、2009年度のネット通販の市場規模は6兆5700億円と、百貨店と肩を並べた。ネット利用者数が9000万人を上回り、携帯電話などを通じて容易にアクセスできる環境が整ったことで、ネットを巧みに使いこなす消費者が増えている。 ネットは万能ではなく、負の側面も無視できない。国民生活センターに寄せられる返金や返品などネット通販を巡るトラブルの相談件数は09年度に初めて10万件を突破した。それでも消費者はネットをテコに企業行動の変化を迫る。新しい消費者にどう向き合うのか、試行錯誤は続く。

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